夏の自由研究:SIRENに登場する「宇里炎」とは一体何か?

宇里炎(うりえん)

三隅郷土館指定重要文化財

武具携十字型土偶

大きさ:約20センチ

発祥不明

年代不明
前~中期のものと思われる、剣と盾の紋様がそれぞれに彫り込まれた土偶。

戦いを司る精霊を模した形状と考えられ、武功を祈願する古代の祭祀に用いられた呪具ではないかと推測されている。
備考
片方には盾が彫り込まれていて、乳房のようなものも確認できる。もう一方には剣の紋様が彫り込まれていて、乳房は確認できない。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~ruri-imo/siren03.txt

土偶という観点からの考察

作成時期について

 土偶は縄文時代に沖縄を除く日本各地で作られたもので、説明には前~中期とあるが、土偶自体が自立している特徴*1から、中期~後期あたりに作成されたものと推測できる。土偶の作られた目的に関しては定かではないが、女性を象ったものが多いことから、農作物の豊穣を願う地母神崇拝が目的であるとされているが、宇里炎に関してはそうではないだろう。

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長野県中野市の姥ヶ沢遺跡から出土した土偶。自立できることから縄文時代中期くらいに作成されたものと推測できる。

中野市立博物館 姥ヶ沢遺跡出土の土偶の愛称を「姥ヶ沢ビーナス」と決定

土遇としての特徴

 この宇里炎の土偶二体は、男性型には剣のような紋様、女性型には盾のような紋様が彫り込まれており、女性型には乳房が確認できる。

 まず、男性型の剣のような紋様を見てみる。これは直剣であり、時代から考察すると大陸から伝わってきた銅剣がモチーフになっているはずだ。山形県の三崎山遺跡からは大陸との交易によって渡ってきたとみられる、約3,000年前の青銅刀子が発見されている。縄文時代後期には青銅刀子を模倣したと見られる石刀が既に作られていたようだ。*2

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佐賀県神崎郡吉野ヶ里町の遺跡から発掘された銅戈(どうか)。戈とは敵に打ち付けて殺傷する武器である。ピッケルを武器にしたようなものだ。

吉野ヶ里遺跡の紹介:遺物編|吉野ヶ里歴史公園

 次に、女性型の盾のような紋様を見てみよう。これは長方形で丸盾ではない。盾が大きな長方形型から小型の丸盾になったのは、鎧が鎖帷子などの軽装から、全身を覆うフルプレートアーマーに変化してからだそうだが、これは西暦1600年くらいの話なので、宇里炎とは全く関係のない話だ。

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滋賀県守山市下之郷遺跡から出土した長方形の盾。奥に見えるのはかざり弓といわれるもの。

http://inoues.net/club6/simonogoh_m.html

 縄文時代中期から弥生時代初期に、日本には既に盾が存在していたことはわかっている。また、奈良県田原本(たわらもと)町の清水風遺跡から出土した弥生時代中期の土器には左手に長方形の盾を持ち、右手に矛を持った人が線刻されていた。

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古代ローマ兵のイラスト。フルプレートアーマーが登場するまでは、このような大きな長方形の盾が使われていた。

ILLUSTRAMBLE - 川島健太郎

誰が作ったのか?

 まず、この土偶の特徴から考慮すると、宇里炎という土偶を作ったのは縄文時代中期~後期の縄文人ということで間違いはない*3だろう。ただ、あくまでも土偶という形を作っただけであり、神の力は宿っていなかったと思われる。

 ある縄文人が別の次元*4からやってきた何かを見て、畏敬の念を込めてこの土偶を作ったのかもしれない。

蛇足:古代宇宙飛行士説

 土偶を調べていて少し気になった点があるので、あくまでも蛇足ということでここでまとめておきたい。

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 これは青森県つるが市木造亀ヶ岡遺跡から出土した「遮光器土偶」というものだ。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 遮光器土偶(どぐう) 

 土偶というのは特徴を誇張して表現することが多いので、現実に存在する・した何かを表現しているには間違いないのだが、ありえない造型になっていることがほとんどだ。この遮光器土偶にかんしても、よく観察してみると乳房はないが乳首のようなものはあり、また、ふくよかな下半身をしていることから、女性である可能性が高い。

 顔に関して言えば、表情はなく、イヌイットの「遮光器」にそっくりな目が特徴的だが、これも女性の大きな目を誇張して表現したに過ぎないだろう。

 しかし、この遮光器土偶は見ようによっては宇宙服を着た人間に見えなくもない。縄文時代、宇宙からやってきた別の世界の宇宙飛行士を縄文人が土偶で表現したのではないか・・・。証拠となる痕跡は一切残っていないので、これを古代宇宙飛行士とする説は、一般的ではない。*5

宗教学的観点からの考察

 宇里炎の元ネタは聖書に登場する「ウリエル」であることがディレクターによって既に語られている。

羽生蛇村日報 第30報 - アーカイブ大全(No.37〜No.45) - 『SIREN NEW TRANSLATION』BLOG

 ウリエルは「神の炎」または「神の光」を意味し、新約聖書外典「ペトロの黙示録」では、神を冒涜する者を永久の業火で焼く、懺悔の天使として登場する。その名の通り、宇里炎は使用者の命と引き換えに青白い炎を地の底から吹き上がらせたり、天から降り注がせたりして、屍人達を永久に葬り去ることができるわけだが、これだけで宇里炎=ウリエルとして話を片付けるには、謎が残る。

宇里炎の正体は誰なのか?

 結論からいうとウリエルではない。もし仮にウリエルだとすれば、男性型と女性型の2体が作られる理由がない。性別はともかく、1体で十分なはずだ。

 ここで、ゲーム中に登場する、宇里炎の正体に近づくことができるかもしれない、アーカイブを紹介したい。

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これは、アーカイブ撮影のためにスタッフが実際に作ったもので、ゲーム中に登場する天使のレリーフである。一般的な天使のイメージとはかけ離れているが、首から肩にかけて翼のようなものが確認できる。

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 剣と盾を持った二人の天使は、頭にマナ字架の冠をかぶっている。このレリーフだけでは二人の性別は不明だが、一般的なイメージとして、険しい表情で剣*6を握り締めている方が男性であり、穏やかな表情で盾を胸の前に掲げているほうが女性だろう。

双子の天使メタトロンサンダルフォン

 双子の天使ということで、聖書やその他の資料を調査してみるとユダヤ教メタトロンサンダルフォンという双子の天使が存在することがわかった。偽典「エノク書」によるとこの二人は元は人間なのだが、死後、天使になったとされる。

 メタトロンは出典によっては神と同一視されるほどの天使であり、「炎の柱」として表現されるという。生命の樹の第一のセフィラ(数字の意)の守護天使だという。

大天使メタトロン(1)

 サンダルフォンメタトロンの双子の兄弟とされ、罪を犯した天使たちを閉じ込める幽閉所の管理人であるともされている。生命の樹の第十のセフィラの守護天使でもあり、女性とする説もあるようだ。

天使になったとされる人間、メタトロンとサンダルフォン。

 土偶としての宇里炎のモデルとなっているのは、恐らくはこのメタトロンサンダルフォンである。巨大な羽と無数の目を持ち、反抗したものを串刺しにすることもあるというメタトロンは剣を持った姿で描かれ、天国の歌を司り、ミカエルと共にサタンと戦うサンダルフォンは盾を持った姿で描かれたに違いない。

何故「うりえん」と呼ばれるのか?

 「エノク書」によると、天使たちが地上に降りて邪悪を働いたときに、神に使わされたウリエルは預言者としての役割を与えられ、ノアに洪水を知らせたとある。ここからは筆者の想像だが、ウリエル縄文時代メタトロンサンダルフォンと共に羽生蛇村に降り立ち、後の災いを人々に予言したに違いない。ウリエルはその時に、神の炎として姿を現したので、土偶としては形が残っておらず、天使として降り立ったメタトロンサンダルフォンを見て、人々は土偶をつくり、彼らを祀ったのだろう。

 そう考えると、天使のレリーフの二人の天使の間に浮かぶ太陽は、神の炎のウリエルなのではないか*7と推測できる。

眞魚教と異教

 ゲーム内資料によると、羽生蛇村に眞魚教が起きたのは、天武12年、つまり西暦684年に堕辰子が羽生蛇村に落ちてきて村人に食われた後で、堕辰子の首を御神体とする宗教が起こり、秘祭が始まったとある。

 その後、天文18年(西暦1549年)には異教と習合したとあるが、この異教は明らかにキリスト教である。天文18年はフランシスコ・ザビエルが鹿児島にやって来た年であり、キリスト教の伝播が始まった年だ。

 明治6年には禁止された異教が解禁され、それを隠れ蓑にした眞魚教も復活したとあるが、これは慶応4年(西暦1868年)に五榜(ごぼう)の掲示によって禁止されたキリスト教が明治6年の2月に公認された史実と一致する。

 異教にとって見れば、眞魚教は邪教そのものであったに違いない。呪いを解くためとはいえ、生贄を捧げるような儀式は、異教には存在しなかったはずだ。異教にとって眞魚教との習合は決して認められるべきものではなかった。

 縄文時代メタトロンサンダルフォンとこの地に降り立ったウリエルは、こうしたことを人々に予言し、眞魚教との習合を避け、御神体として崇められている堕辰子との対決に備えて、宇里炎や木る伝*8といったものを残していったのではないだろうか。

諸星大二郎作「生命の木」との関連

 有名な諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」シリーズの中に「生命の木」という話がある。これは東北のとある隠れキリシタンの土地が舞台なのだが、そこには独自の「創世記」が伝わっている。

 その「創世記」によれば、遥か昔、人間は楽園に住んでいたが、禁断の果実を食べて「でうす*9」の怒りを買い楽園を追放された。「あだん*10」と「えわ*11」は知恵の実を食べたが、もう一人の人物「じゅすへる*12」は生命の実を食べ、「じゅすへる」とその子孫は神と同じ不死身となった。そのことを憂えた神は「いんへるの*13」を開き、じゅすへるの子孫は生まれてからある程度のときがたつと「いんへるの」に落とされ、「きりんと*14」がやってくる日まで苦しみ続けるという。

 この「創世記」をSIRENの世界にあてはめて考えてみよう。

 まず、かつては「楽園」に住んでいたが、生命の実を食べて追放された「じゅすへる」を堕辰子とすると、羽生蛇村の八尾比沙子と神代家の人々と屍人は、その子孫たちだろう。半屍人は海送り・海還りによって完全な屍人となり、彼らの楽園である「いんふぇるの」に向かうが、そんな彼らを救済するのが宇里炎を持った「きりんと」である求道師なのではないのだろうか?

まとめ

 以上の検証要素から「宇里炎」とは一体何かというテーマに関して、以下の結論を得ることができる。

  1. 宇里炎という土偶自体は縄文時代中期~後期に羽生蛇村が興る場所に住んでいた人類が作ったものである。
  2. 2体の宇里炎は、それぞれメタトロンサンダルフォンを表している。
  3. 宇里炎の力は異教の神と不完全な永遠の命を葬るウリエルの力である。

 勿論、これらが100%ということは有り得ないので、サイレンファンの方はこれを機に自分なりにサイレンというものを再解釈してみてほしい。遅くなったがサイレン発売から11周年を心から祝福する。

*1:縄文時代前期に作られた土偶は手足や顔の表現がない。三重県松坂市飯南町の粥見井尻遺跡から出土した縄文時代草創期の土偶が最もわかりやすい。

*2:島根県出雲市斐川(ひかわ)町で昭和58年に発見された荒神谷(こうじんだに)遺跡からは、弥生時代のものと思われる銅剣が一度に358本も発見された。358本は50cm程度のもので、うち344本の柄の部分には×印が刻まれていたが、この×印が何を意味するのかは未だに解明されていない。

*3:もし、別次元の存在が作ったとしたら土偶のような形では残さなかっただろうし、もっと高次元の何かになっていたはず。例えて言うならばSIREN:NTのうりえんのようにだ。

*4:我々が住む世界は三次元もしくは四次元とされている。ここでいう別の次元の存在というのは、我々の決して認識することができない次元ということである。例えば、我々が自分の影と握手ができないように、多次元の存在とは干渉できない。

*5:一般的ではないがここに掲載したのは、そういったマイノリティの意見を無視するということは、想像の楽しみを奪ってしまうからだ。世の中には100%ということは存在しない。

*6:天使が曲刀を持っているというのはどこか妙である。

*7:眞魚教の主である堕辰子は太陽の光に弱いので、屍人達に巣を作らせて身を守っていたことを考えると、この天使のレリーフの中央に描かれている太陽という存在は妙である。ただ、二人の天使がマナ字架の冠をかぶっているところを見ると、このレリーフを作ったのは間違いなく眞魚教信者だ。

*8:ケルビムのこと。ケルビムとは四つの顔を持つ天使のことで、回転する炎の剣と共に生命の樹への道を守っているという。この炎の剣はSIRENでは焔薙(ほむらなぎ)に当てはめて考えることができる。

*9:ゼウスのこと。

*10:アダムのこと。

*11:エヴァのこと。

*12:ルシファーのこと。

*13:インフェルノ。地獄のこと。

*14:キリストのこと。